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愚かの極み「トランプ楽観論」

国際秩序「暗転」はもはや不可避

2016年12月号特別リポート

 愚かな人間の悲しい性としか言いようがない。希望的観測だ。当選するはずがなかったドナルド・トランプ氏が第四十五代米大統領に当選した直後から、米国内外に見られる、「政治家や軍人の経験のない素人が大統領に選ばれた以上、現実の厚い壁にはばまれて従来の言動を軌道修正するだろう」との観測だ。確かに日本や韓国に核武装を奨励したつもりはないと自らツイッターで否定した例はあるが、希望的観測が打ち砕かれたのは環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)からの脱退を、来年一月二十日の大統領就任式に合わせて通知するとの痛烈なパンチだろう。
 米国は自由貿易主義の旗を掲げて経済的発展を遂げてきたとの常識論を熱心に説く向きは、大統領選挙の対立候補だったヒラリー・クリントン女史のTPP反対論についても、「彼女が大統領になれば白紙撤回するだろう」と本気で信じていたのだから話にならない。そもそも次期副大統領候補で、政権移行チーム議長としてトランプ・グループで最も重要な役割を演じているマイク・ペンス氏は自由貿易論者で、TPPを一貫して支持してきた人物ではないか。
 人事もいい加減だ。政権移行チームに長男ジュ・・・