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ドイツで出始めた独自「核武装論」

トランプで目覚める「平和ボケ国家」

2017年1月号

 ドイツで独自「核武装論」が突如、沸き起こった。今回の主役は、ドイツ高級紙「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)」や、アンゲラ・メルケル首相率いる与党「ドイツキリスト教民主同盟」(CDU)の有力な防衛族議員だ。何が起こっているのか。
 最初に爆弾を落としたのは、左派系高級週刊誌「デア・シュピーゲル」である。コラムニストのヘンリク・ミュラー・ドルトムント工科大学教授は、専門の経済学の視点から、「トランプ当選後は、米軍はヨーロッパから撤収する。そうなると、ドイツの防衛費は(今の二倍以上の)八百億ユーロが必要になる」とした上で、「ドイツの独自核兵器が可能か否か、議論があってしかるべきだ」と指摘した。
 教授のコラム掲載は米大統領選数日前のこと。ドイツ国内のネット上には、「何をバカな」「シュピーゲルたるものが、何を言うのか」など、批判の合唱が起きた。だが、実際にトランプ当選の衝撃波が起こると、コラムは新たな読者を得て、見直された。同教授は「たとえ、クリントン政権の場合でも独自核論議は必要」と書いていた。ドイツ人にとっての最悪のシナリオ現出で、国防力見直し・・・