三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

「ドストエフスキー」で読み解くプーチン

日露会談「安倍完敗」に終わった理由

2017年1月号

 日露首脳会談では、安倍晋三首相率いる日本チームと、ウラジーミル・プーチン・ロシア大統領との役者の違いが際立った。理屈が跳ね返され、情への訴えも通じず、最後は相手の思うまま。十九世紀のロシア文学を地で行く展開だ。ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官は最近の米「アトランティック」誌との会見で、「プーチンを理解するなら、ドストエフスキーを読め」と喝破している。

「フョードル」の性悪さ

 プーチンがドストエフスキーを愛読していることはよく知られている。文豪の巨大な小説群には、今のロシア、プーチン政権を理解する様々な示唆が潜んでいる。ある米国人ロシア文学研究者はプーチンを、「小説から飛び出してきた人物」とずばり形容した。
 第一の特徴は、際立った「ワル」ぶりである。偽悪家でも、策略家でもない、底知れない性悪さだ。
『カラマーゾフの兄弟』の父親、フョードルはその代表格である。醜悪な容貌で、大嘘つき。強欲でカネに汚く、女性の弱みにつけ込んでレイプ、セクハラを罪悪感なくやってのけ、周囲に吹聴する。ドスト・・・