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連載

皇室の風 101

王より王党派
岩井克己

2017年1月号

「王より王党派」という言葉を教えてくれたのは、宮内庁式部官長だった故安倍勲だった。ベルギー大使、国連大使を歴任したあと、昭和天皇の晩年から大喪までの十年間にわたり宮中儀式や外国交際を仕切った。
 平成五年四月に式部職参与も退任することになり、前日に参与室を訪ねると、荷造りした大量の段ボール箱に囲まれ、独りぽつんと目をつむってソファに座っていた。長年仕えた宮中を去る感慨を尋ねると、フランス語が飛び出した。
「プリュ・ロワイヤリスト・ク・ル・ロア(plus royaliste que le roi)という格言がフランスにあります。王より王党派の人たちが王制を危うくするという風に使うんですよ。これから平成の皇室は大丈夫かな。心配だなあ」
 世は皇太子婚約で沸く一方、保守系雑誌による平成皇室へのバッシングが起きていた。「古今東西を問わず、王党派は王制と自分が思い描く国王像を崇拝し、実は王を敬っていない」というわけだ。
「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」の保守系のヒアリング対象者たちの発言を読んで安倍の言葉を思い出した。
「譲位は認めな・・・