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「ジハード」の新たな主敵はロシア

プーチン「テロとの戦い」の底なし沼

2017年2月号

「覚悟しておけよ、プーチン。俺たちは今からロシアに行く。そしてお前の家で、お前を殺す」
 マスクをした男が、砂漠を疾走する車の中から、人差し指を突き上げた。九分に及ぶ、血も凍るようなビデオメッセージの最後に、この言葉が流れたのは、昨年七月末のことだった。イスラム過激派「イスラム国」(IS)からの、宣戦布告メッセージである。
 そのほぼ半年後の今年一月中旬。
ロシア北カフカス地方のチェチェン共和国で、当局が「過去十年間で最大」と形容する、大規模な人狩りが始まった。
 共和国首都グローズヌイの東方三十キロほどにある複数の山村を、大陣容の軍と警察が深夜に取り囲み、一戸ごとに急襲して家探しをするという軍事作戦で、ロシア当局が認めたものだけで「六十人以上」、現地関係者の証言では百人以上が拘束された。
 こちらは、ウラジーミル・プーチン大統領とラムザン・カドゥイロフ・チェチェン共和国大統領が進める「ロシア版対IS戦争」である。
 北カフカスには、「カフカス首長国」という、ISに忠誠を誓った組織がある。摘発はこの組織に関係したと疑われる全員・・・