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社会・文化

沖縄に忍び寄る中国の「紅い魔手」

蔓延るスパイ活動と「植民地化」戦略

2017年2月号

 ギリシャ神話で有名な「トロイの木馬」は、ギリシャのオデュッセイアがトロイを攻略する奇策だ。オデュッセイアは巨大な木馬を作らせ、その中にギリシャ兵を隠してトロイへ運ぶ。トロイの王女は罠だと忠告したが市民は誰も聞き入れず、トロイは陥落する。物語は転じて、内通者が巧みに相手を陥れる策略を意味するものとして伝承されてきた。今、この神話を彷彿とさせるスパイ活動が対中国の最前線、沖縄で繰り広げられている。大挙して沖縄を訪れる中国人に紛れて、沖縄の米軍や自衛隊の動向を探る諜報活動が展開されているのは、極東最大の米軍嘉手納基地や航空自衛隊那覇基地など要所の周辺だ。さらに、沖縄から噴き上がったとされる「琉球独立論」にも中国の影がちらつく。「反米」感情に乗じて沖縄県民に忍び寄る紅い魔手を追う。
 東アジアの地図を逆さまにすると、沖縄本島を中心とする南西諸島が東シナ海に連なり、それが中国の太平洋進出を阻んでいる現実が如実に読み取れる。それは冷戦当時、ソ連にとって日本列島全体が「不沈空母」として横たわり、太平洋への展開を阻止してきた過去と相似形だ。これを突破するために軍事力を増強しているのは日々の・・・