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社会・文化

真言宗高野山「金銭醜聞」の膿

密教寺院を揺るがす「泥沼訴訟」

2017年2月号

 異例の寒波が日本列島を覆った睦月、標高八百メートルを超える霊山の山上盆地は、蓮華のように連なる八つの峰々に囲まれ、荘厳な静寂に包まれていた。「八葉の峰」と呼ばれるこの地は、真言密教の聖地である高野山である。紀元八一六年、平安時代の高僧として著名な弘法大師空海が真言密教の根本道場として開創して以来、一千二百年の時空を超え、幾多の人々から信仰を集めてきた。国家と国民の安泰を祈る至高の寺院で今、その高邁な信仰とは対極的な「金銭醜聞」が泥沼化している。当事者は空海の教えを忠実に守り、世に伝播すべきはずの僧侶である。訴訟にまで発展した金銭スキャンダルとその裏側に滞留する膿は末寺や信徒をも苦悶させる。
 高野山金剛峯寺(和歌山県伊都郡高野町)を総本山とする宗派は、宗教法人「高野山真言宗」(以下、宗派)である。日本の仏教界を代表するこの宗門は現在、巨額資金を巡る前代未聞の裁判を抱えており、その法廷に費やされる費用が財政を圧迫。全国に点在する約三千六百カ寺の末寺が、その財産規模に応じて「総本山金剛峯寺」(宗派とは別の宗教法人=以下、総本山)に納める宗費の引き上げにつながって檀家に重くのしか・・・