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社会・文化

狩猟ブームは日本に根付くか

北海道「エゾシカ撃ち」の魅力

2017年2月号

 距離約二百メートル。広大な牧草地と、その奥に広がる原生林との境目に、一頭のエゾシカが立っている。獲物との間に遮蔽物がないこうした状況では、意外なほどに音が通る。聴力を発達させることで身を守ってきた草食動物にとって、ライフルの金属的な装填音ほど恐ろしいものはないだろう。
 音を立てぬようにボルトをゆっくりと、しかし確実に操作して、薬室に一発の実包を送り込む。二十四倍のスコープにエゾシカの姿を捉えながら、ジリジリと絞るように引き金を引く。エゾシカと目が合ったその瞬間、ドーン!という轟音が鳴り響き、巨大な体躯が崩れ落ちる。
 レクリエーショナル・ハンティング。娯楽やトロフィー(角や首の剥製など)獲得を目的とした狩猟だ。スポーツ・ハンティングともいい、欧州を中心に古くは貴族の娯楽として広まったもので、日本でも大名や皇族が狩りを愉しんだことが知られている。アフリカでは現在でも野生動物を対象にしたスポーツ・ハンティングが行われているが、これは地元の重要な観光資源となっている。
 こうした収益は地元振興に充てられるだけでなく、野生動物生息域の保全などにも使われていると・・・