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連載

Book Reviewing Globe 394

プラザ合意Ⅱはやれない

2017年3月号

 トランプ政権の誕生後、米国の景気が拡大するのではないかとの期待感から、ドル相場が上昇基調に転じている。
 しかし、ドル高はトランプ政権の掲げる米製造業の復活にはマイナスになる。いずれ、トランプはドル安政策に転じるのではないかとの観測が出るゆえんである。
 中には、プラザ合意Ⅱを予測する向きもある。一九八五年九月、米国、日本、西ドイツ、フランス、英国の五カ国蔵相がニューヨークのプラザホテルで各国一斉のドル売り協調介入を決めたプラザ合意に似たドル安政策協調を今回は、米ドル、ユーロ、円、人民元の間で行うのではないかと見るのである。しかし、プラザ合意とはいったい、どのような政策協調だったのか。その意味と意義は何だったのか。
 八五年までの五年間に、ドルの価値は倍増していた。米国の経常赤字は一千億ドルに膨れ上がっていた。米国内では保護主義的圧力が高まっていた。
 貿易収支の不均衡をこのまま放置しては米国内で保護主義的逆流が噴出し、自由貿易体制が維持できなくなる、との切実な危機感を米政権は持ったし、それを各国とも共有した。プラザ合意を実施した結果、ドルの対・・・