三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

金正恩体制は当分「盤石」

ミサイル開発と「暗殺」が示した安定

2017年3月号

 マレーシア・クアラルンプールの国際空港で白昼堂々遂行された金正男の暗殺劇。事件を伝え聞いた各国の北朝鮮エキスパートは皆驚いた。「どうして、人混みの中で殺害行為に至ったのか」。世界の国際空港のほとんどは、軍や武装警察を常駐させている。殺害に失敗する可能性もあるし、成功しても逃亡が難しくなる。まるで、逮捕してくださいと言っているようにも見える。
 実際、マレーシア現地警察は事件後、ベトナムとインドネシアの旅券を持った女性二人を逮捕。二月十七日夜には「リ・ジョンチョル」と書かれた北朝鮮旅券を持った男も逮捕した。
 一見お粗末にも見えるこの事件だが、韓国政府高官は別の見方を示す。「誇大妄想かもしれない。だが、正恩が非常に自信を持っているのも事実だ。こんな芸当は体制が安定していなければできない」。
 金正男を殺害すれば、世界の耳目を集めることは確実だ。閉鎖国家の北朝鮮だって、そんなことぐらいは予測がつく。金正日総書記の息子である金正男の殺害を命じることができるのは、金正恩しかいない。世間の非難が自分に向くことを承知のうえで、しかもあからさまに犯行をやってのけた。{・・・