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政治

「共謀罪」騒動にみる政官の無能

テロ対策を放置する平和ボケ国家

2017年3月号

 一人の暴走を許さず、妥協点を探る建設的な面があるのが「三つ巴」なら、保身目的の相互牽制で身動きがとれない不毛の状況が「三すくみ」だ。前者は米国でのドナルド・トランプ大統領と司法や議会との対峙を、後者は日本での「テロ等準備罪」に改称された「共謀罪」導入を巡る二〇一七年通常国会の議論を、連想させる。重要課題を二十年近く放置して恥じない与野党のポピュリズムと霞が関の省益本位体質による三すくみは、トランプ大統領を生んだ米国政治の劣化以上に深刻だ。
 〇九年に三度目の廃案となって以来、七年半ぶりに脚光を浴びた共謀罪創設のための組織犯罪処罰法改正案は、提出前から野党が激しく批判し、法務大臣の金田勝年の答弁は迷走した。南スーダンでの陸上自衛隊の日報問題で能力不足を露呈した防衛大臣の稲田朋美と共に金田を更迭すべきだと周囲に助言された総理大臣の安倍晋三は、「稲田はいいが、金田には失望した」とぼやいたという。稲田に抱くような愛着を持てないとしても、あまりにも対照的な反応には、官僚出身の金田に期待した答弁能力を見誤った苛立ちに加え、厭戦気分も表れている。

与野党ともにポピュリズム・・・