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「対イラン戦争」へ向かう米国

「シーア派退治」を望む国々と共に

2017年3月号

 発足間もない米新政権に、早くも「次の中東戦争」の足音が聞こえてきた。今回の標的は、イスラム教シーア派の大国イラン。トランプ政権はその土台さえ定まらないのに、「一〜二年で戦いが起きる」との観測が浮上している。
 次の戦争を後世の歴史家が描くとすれば、プロローグはこれだ。
 二〇一七年一月二十五日。
 ワシントンのホワイトハウスで、ドナルド・トランプ新大統領、スティーブ・バノン首席戦略官、大統領の娘婿のジャレッド・クシュナー上級顧問の三人が、ジェームズ・マティス新国防長官を交えて夕食をとっていた。
 バノン、クシュナー両氏は、大統領が最も信頼する知恵袋。現役軍人時代に「狂犬」との異名をとったマティス氏は、「イランこそ最大のテロ脅威」と公言してきた人物。歓談の行方はおのずとある方向に向かったはずだ。
 この場で決まったのは、イエメンを拠点にする「アラビア半島のアルカーイダ(AQAP)」の秘密基地をエリート部隊で急襲することだった。翌日早速、国家安全保障会議の次官会議が招集され、大慌てで特殊部隊「SEALs」を中心にした作戦が固まった。一一年・・・