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社会・文化

英国最高峰の「貴族」の素顔

「一兆二千億円」仰天の遺産相続

2017年3月号

 世界で最も住宅価格の高い英国ロンドンに、中心部一帯の最高級地を所有する二十六歳の不動産王が誕生した。ヒュー・リチャード・ルイス・グローブナー第七代ウェストミンスター公爵は、昨夏死去した父親、第六代公爵の九十億ポンド(当時の為替レートで約一兆二千億円)の遺産を相続した。
 グローブナーと言えば、その名を冠したホテル、広場や大通りがあり、ロンドンを訪れれば必ず耳にする名前である。この名前の起源がグローブナー家で、十七世紀に准男爵に叙せられた家系。十九世紀に、ビクトリア女王により「ウェストミンスター公爵」とされた。
 ロンドンの大地主になったのは、准男爵だった時代の十七〜十八世紀。現在の金融街「シティー」の外縁部に所有地を広げ、メイフェア、ベルグレイヴィアの一帯を開発していった。大英帝国とその首都の発展とともに、グローブナー家領はそのまま、バッキンガム宮殿や英国会議事堂に隣接する、英国で最も華やかで、豪壮な建物が並び立つ一画となった。現当主の祖父、第五代ウェストミンスター公爵(一九一〇〜七九年)の頃には、英国最高級の大地主にして、第一の富豪の地位を確立した。
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