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経済

原子力規制委員長「田中再任」の蠢動

「核燃料サイクル」の命運や如何に

2017年4月号

 自民党総務会長の細田博之は聞く耳をもたなかった。
「考え直してください」
 一月中旬、環境省大臣官房長の森本英香が打診してきた人事案を一蹴したのだ。人事案とは、九月に五年の任期を満了する原子力規制委員会(同省外局)の委員長、田中俊一の再任にほかならない。全国の原発の死命を制してきたこの権力者に対する、細田の敵愾心は強い。東日本大震災から六年が経過したにもかかわらず、再稼働に漕ぎ着けた原発はわずか三基。細田の地元の島根二号機に至ってはまったく見通しが立っていない。
 この間に電気料金は三割近く値上げされ、今も石油・天然ガスの大量輸入に国富の流出が続く。「規制委によるわが国の企業経営、家計への打撃は国家的犯罪!」とまで獅子吼してきたのが細田である。実はその細田が“田中放逐”へ臍を固める事態が一カ月前に起きていた。
「虚偽報告とは言わないが、手抜きも甚だしい」
 昨年十二月十四日、田中はこう言い放ち、六ヶ所再処理工場を建設する日本原燃に対し、保安規定違反を指摘、原因究明と是正措置を求める報告徴収命令を発動した。しかも・・・