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ローマ法王「退位」を迫る米国保守派

バチカンを揺さぶる「トランプ」の影

2017年4月号

 街中に指導者を糾弾するポスターが張られ、マスコミでは誹謗中傷のデマが流される。やがて追い込まれた指導者は、辞任を余儀なくされる—。こんな古典的なクーデターのシナリオは、最近では中南米やアフリカの小国でもめったに見られなくなった。
 ところが同様に荒っぽい、筋書きの露骨な政治謀略が、ローマ法王のお膝元で起こっている。しかも、明らかにフランシスコ法王降ろしを目的にした陰謀には、トランプ米政権も関係しているというのだから、暗闘の行方は重大である。

バノンと「反法王」枢機卿が結託

 フランシスコ法王糾弾のポスターは、二月四日の土曜日にローマ市内に突如姿を見せた。バチカン市国の周辺や、ローマの他の地区に夜のうちに張られたと見られ、休日のローマ市民を驚かせた。
 しかめっ面の法王の写真の下には、「おい、フランチェ(フランシスコのイタリア語蔑称)、お前には慈悲の心がないのか?」との呼びかけが大書きされていた。その「悪行」として、「会衆を乗っ取り、聖職者を辞めさせ、枢機卿を無視した」ことが列・・・