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社会・文化

「ミサイル防衛」という壮大な虚構

米国製「破れ傘」に消える税金と安全

2017年4月号

 季節外れの打ち上げ花火よろしく、北朝鮮の弾道ミサイル「乱射」が止まらない。三月には弾道ミサイル四発を日本海へ撃ち込み、核実験も五回に及ぶ。対する日本はミサイル防衛(MD)網の増強へ狂騒曲が鳴り響く。しかし、もともとMDは北朝鮮に対する抑止力として導入したもので、ここまで核・ミサイル開発が急進し、金正恩・朝鮮労働党委員長の狼藉ぶりが際立つと、その効果も怪しい。しかも、完全な迎撃は不可能なのに、これを追求してMD網を増強していけば、予算は無限大に膨らむ。それを回避するには、敵基地攻撃能力を備えるしか対処の手段はないが、政府は及び腰で、米国の打撃力に身を任せる。彼の国でトランプ政権が始動したことで米朝関係が緊迫化し、MDに内在する陥穽も浮かび上がってきた。
 日本のMD網は二段構えで、まず日本全域をカバーするイージス艦搭載の「SM3」が大気圏外で弾道ミサイルを撃ち落とす。外した場合、地上配備型の「パトリオット」(PAC3)が高度十五〜二十キロで迎撃する。もっともらしいが、日本のイージス艦は四隻だけ。一隻が同時に撃ち落とせる弾道ミサイルは数発止まりだから、北朝鮮が弾道ミサイルを乱れ・・・

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