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経済

三菱電機でも新人「過労自殺」

「三菱につぶされた」悲痛な叫びを遺して

2017年5月号

 入社一年目の電通社員の過労自殺に世間の耳目が集まるその陰で、日本を代表する総合電機メーカーでも一人の有為な人材が自ら命を絶った事実は知られていない。
「私は三菱につぶされました」「全員の前で公開処刑されました」。悲痛な言葉を遺書にしたためて旅立ったのは、三菱電機に勤務していた隆さん(仮名、当時二十五歳)。この名門企業のいかなる体質が尊い若者の命を奪ったのか、三菱電機はその真相を明らかにしていない。時あたかも、二〇一八年度の新卒採用のまっただ中で、リクルートスーツ姿の学生が夢を追ってオフィス街を行き交う。同じ悲劇を繰り返してはならない。「集まれ、世界をつくる情熱」。今、三菱電機がホームページで学生に呼び掛ける高尚なフレーズが空々しく響く。
 三菱電機は理系の就職人気ランキングでも常に上位に位置する。今年四月三日、創業の地である神戸市のポートピアホテルで入社式が開かれた。ちょうど一年前にも、九百十一人の新入社員が三菱電機の社章を胸にここに集った。自殺した隆さんも、輝かしい未来が待っていると信じて、この晴れの舞台に列席したに違いない。八カ月後、自らその若き命に終止符を打・・・