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社会・文化

ガン呼ばわり「学芸員」は泣いている

文化財の「防人」たちの現実と苦悩

2017年5月号

 怒りをとおり越して、あきれるばかり—山本幸三・地方創生担当相の一連の発言(三月九日参議院内閣委員会、四月十六日大津市でのセミナー)に対し、博物館関係者の怒りは爆発、ニュースは国外にまで大きな波紋を広げている。
 外国語の案内表示をしていない施設として、実際にはすでに実施している二条城を槍玉にあげたり、大英博物館では、抵抗した学芸員を全部クビにして博物館の大改造が成功したとする話はいい加減にも程がある。「観光マインド」や「外国人へのわかりやすい説明」の必要性のために学芸員を攻撃するのは、後に述べるように、学芸員の職務に対する基本的理解の欠如によるものだ。山本氏がいう「文化学芸員」という職名も聞いたことがない。そして、このような事実誤認のうえで、学芸員を「ガン」といい、「クビ」「連中を一掃」といった暴力的な言葉を投げつけたことには、政治家としての資質と品格が問われる。後に、大臣は一連の発言が「行きすぎ」だったと謝罪したのだが、ことは表現の程度の問題ではなく、稚拙な「お門違い」発言というべきである。 
 一方、これを機に博物館や学芸員が抱える問題を訴えようと・・・