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「孤独の大国」トルコの苦境

絶頂エルドアンは「四面楚歌」に

2017年5月号

 トルコのエルドアン大統領が、大統領権限強化の憲法改正を問う国民投票で「勝利」したのも束の間、じわじわと奈落の底に向かい始めた。ロシアのプーチン大統領との良好な関係を背景に、米国に挑んだのが転落の始まりだ。
 事件は、三月上旬に起きた。
 シリア国内に入って、南進を続けていたトルコ軍と、事実上その指揮下にある「自由シリア軍(FSA)」は、主要都市マンビジを目指していた。トルコ国境から三十キロほどの要衝。一帯はトルコ系のトルクメン人が多く住み、その一部はFSAに加わっている。そこへ突然、「進軍は停止だ。米軍が目の前にいる」との指令が入った。米中央軍司令部の指揮下にある海兵隊精鋭部隊が空路、クウェートの前線基地からマンビジに舞い降りたのだ。この時、マンビジを支配していたのは、クルド人勢力。トルコ軍がクルド人勢力を一掃しようとしていたところに、突如、数百人の米兵が文字通り、割って入ったのである。
 国民投票の遊説中だったエルドアン大統領は、衝撃を受けた。米側は、「IS拠点のラッカ攻略が目的」としたが、トルコ軍を止める意図は隠しようもない。マンビジ侵攻が阻まれれば・・・