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連載

新・不養生のすすめ3

「抗がん剤信仰」がもたらす不幸
大西睦子

2017年6月号

 今年二月、米国の医療政策などの通信社であるカイザー・ヘルス・
ニュース(KHN)に、進行性乳がんに苦しむマーリン・マッカーシーさん(七十三歳、ロードアイランド州在住)の話が紹介された。 マッカーシーさんは、四十四歳のときに乳がんと診断され、治療後約二十年間落ち着いていたが、七年前に骨に再発した。二〇一五年、その年に米食品医薬品局(FDA)に承認されたイブランスを使用したが、開始四カ月後、新しい骨転移が見つかった。別の新規抗がん剤アフィニトールもあったが、医師に多くのリスクを警告されて試さないことにした。今は痛みのため杖なしでは歩けず、自分の病気が治らないことを理解している。マッカーシーさんは、FDAが、がんの治癒や延命に役立つという証拠なしに、抗がん剤を承認していることに不満を抱いている。
 たしかにFDAは早く新しい治療薬の使用を望む患者の期待に沿って、急いで抗がん剤の承認をしているが、実際はほとんど効果がない。一四年の米医師会雑誌(耳鼻咽喉科頭頸部外科版)の米国立がん研究所ティト・ホジョ博士らの報告では、〇二年から一四年までに承認された七十一の抗がん剤の延命効・・・