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連載

日本の科学アラカルト82

もうひとつの「夢のエネルギー」レーザー核融合の進歩

2017年6月号

 再生可能エネルギーと呼ばれる水力、風力、太陽光などは、どれも本をただせば太陽から降り注ぐエネルギーを、形を変えて利用している。化石エネルギーも、古い時代の植物やプランクトンといったものが時間をかけて変化していったものであることを考えれば、太陽の恩恵によるものだ。
 我々人類は核分裂のエネルギーを実用化レベルの技術として獲得している。これは物質そのものが持つエネルギーを取り出すという点で前述した太陽とは直接関係がない。しかし言うまでもなく核分裂ではエネルギーと一緒に厄介な放射性廃棄物が生み出される。
 同じく物質の持つエネルギーを直接取り出す方式でありながら、放射性廃棄物を生み出さないのが核融合だ。その反応は太陽で発生しているものと同じだ。実際の太陽では様々な反応が連鎖的に起きているが、最も基礎的な原理は「水素と水素がぶつかりヘリウムができる過程で減少した質量の分のエネルギーが放出される」というもの。
 核融合反応は兵器では「実用化」されている。水素爆弾だ。太陽のような極めて高温、高圧の状態を作り出すために核分裂、つまり原子爆弾の爆発を使いその中で核融合反・・・