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社会・文化

本当は地方で働きたい医師たち

「一万五千人調査」で判明した真実

2017年6月号

 噓も百回言えば真実になる、の典型だろう。地方の医師不足、この原因は医師が都会から離れたくない。僻地は嫌だ。ゆえに、地方での医療崩壊に歯止めがかからず、人口減に拍車を掛けている―。実は、この神話が誤りであり、少なからぬ医師がむしろ地方勤務を望んでいる衝撃の実態が厚生労働省の調査で判明した。厚労省は都会の大学病院と利権を死守するために結託して、医師が地方で働きたくないとのデマを垂れ流してきた張本人。塩崎恭久厚労相の主導で世に出たデータは、厚労省にとって「不都合な真実」だった。なぜ根拠なき伝説がまかり通ってきたのか、その真相に切り込む。
 確かに、地方の医師不足の深刻化は論をまたない。今年二月、福島県いわき市の市立総合磐城共立病院が肺結核患者の入院受け入れの休止を発表した。呼吸器内科の常勤医が定年退職し、後任が確保できなかったからだ。人口三十四万人のいわき市に今、呼吸器内科の常勤医はいない。また三月には鹿児島県の垂水徳洲会病院が閉鎖した。施設の老朽化と医師不足が原因だ。かの徳洲会の地元である鹿児島での病院閉鎖に医療関係者の間では動揺が広がった。
 二〇〇七年に全国で百二・・・