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連載

《世界のキーパーソン》アンドリュー・パーカー(英国保安局〈MI5〉長官)

英テロ対策を担う「スパイの親玉」

2017年6月号

 ジェームズ・ボンドの母国が何をしている―。こんな批判に歯軋りをしているのが、「MI5」の通称で世界に知られる防諜機関「セキュリティー・サービス(保安局)」である。今年三月のロンドン・ウェストミンスター橋での自動車テロ事件(死者四人)に続いて、五月にはマンチェスターのコンサート会場で自爆テロが起こり、二十二人が死亡した。
 MI5は両事件の実行犯とも事前に知っていたのだから、その無念や推して知るべし、である。長官のアンドリュー・パーカーは今回の事件直後に「全職員が反吐を吐き、そして怒っている」という痛恨の声明を出した。
 英国では二〇〇五年七月七日に地下鉄とバスで同時テロ事件が起こって以来、今年のロンドンテロ事件まで十二年近く、大規模テロがなかった。
 その間、MI5率いるテロ対策チームは〇六年に旅客機爆破を企てていたグループを逮捕し、一〇年にはロンドン証券取引所の爆破を計画した九人を逮捕するなど重要な成果もあげた。海外の治安機関からは尊敬さえ集めていた。
 パーカーは〇六年の作戦を直接指揮し、〇七年から副長官を務めた。一三年に長官に就任した。{・・・