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トランプ外交「自滅」への道

同盟国「離反と分断」の重い代償

2017年7月号

 ドナルド・トランプ米大統領の「外交」が早くも大迷走している。就任早々に、国家安全保障問題担当の大統領補佐官の交代を呑まされ、一時は「エスタブリッシュメント」が安保・外交の舵を握るかに見えたが、大統領自身が臨む首脳会談や外遊では、勝手気ままな独演を復活させて米国の同盟国を振り回している。
 すでに中東では伝統的な親米国を分断し、米国の国益を大きく損ねているばかりか、地球温暖化対策と通商で欧州連合(EU)とも決裂している。あまりの予測不可能ぶりに、米国と離れて、ライバルのロシアや中国に軸足を移す国も出てきた。大統領の決定の背後には、個人的利権がからむとの疑惑も絶えない。

米国の中東同盟国網はずたずた

 大統領が「ホームランをかっ飛ばした」と自賛した中東外交。就任初の訪問国となったサウジアラビアで、確かにトランプ大統領は激震をもたらした。
 五月二十日のサウジ王宮。約四十カ国の中東・近隣諸国の首脳級が集まった中で、大統領の関心を独占していたのは、二人の皇太子だった。ホスト役であるサルマン国王の・・・