三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

イラン「首都テロ事件」の真相

国内外向け「自作自演説」が有力

2017年7月号

「まさか、と最初に思いましたね。銃で武装したテロリストがイラン国会に近づけるはずがない」
 テヘラン駐在経験のある大手紙外信デスクが言う。「筆記用具だって分解して調べる国ですから」とも付け加えた。
 最大級の厳戒下にある国会議事堂と、「革命の父」アヤトラ・ホメイニ師の廟が襲撃されたとのニュースが入ったのは、六月七日のこと。だが、その後のイラン治安当局の発表には、不可解な点が多い。
 五人の実行犯はその場で射殺されたが、当局はなぜか一人を除いて、ファーストネームしか公表しなかった。唯一氏名が明かされたセリアス・サデギ容疑者が、クルド系イラン人だったことから、テヘラン在住の西側外交筋の間では「背後にクルド系がいる」との見方が有力になった。
 米中央情報局(CIA)の推計では、イランのクルド人は約八千万人の全人口のうち、一〇%を占めるとされる。大半はイラク国境沿いのクルド人地区に住み、イランの平均的生活水準よりかなり貧しい生活を送る。当然、不満も高い。
 ただ、サデギ容疑者は、数年前から「イスラム国(IS)の勧誘係」としてイラン治安当局に徹底・・・