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経済

出光創業家に巣食った「次男人脈」

経営側との和解は一層困難に

2017年7月号

 春は桜、秋はバラと、福島県民の憩いの場として名高い開成山公園―。かつてその近傍に、石油元売り二位、出光興産の郡山支店はあった。
「もう、かれこれ三十年近く前のことですよ」
 同県の出光特約店の幹部が打ち明けたのは、夏祭りの夜の出来事である。その日、郡山支店は屋上を特約店に開放し、花火見物しながらバーベキューを楽しむ親睦会を開いていた。そこへ当時の社長、出光昭介(創業家の当主、現名誉会長)の妻の千惠子が、会津若松の実家からの帰途、大学生だった長男の正和を伴って現れたのだ。一瞬にして張り詰める空気―。そのうち、正和はポツリと「トウモロコシが食べたい」とつぶやいた。が、間が悪く、その場に正和の好物は品切れだった。すると、千惠子の権高な声が響いた。
「支店長、トウモロコシを持ってきなさい!」
 飛び上がった支店長は慌てて取り寄せ、自ら焼いて正和に食べさせたという。特約店幹部は、このときの気詰まりな緊張を昨日のことのように思い出す。
「みんな見て見ぬふりをしていました。なるほど、これが“出光の女帝”かと…&・・・