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連載

Book Reviewing Globe399

米国に求められる「戦争寸止め」

2017年8月号

 EUが安全保障戦略文書を初めて作成したのは二〇〇三年である。
「歴史上、欧州がかくも繁栄し、かくも安全で、かくも自由だったことはない」と高らかに謳い上げた。あれから十四年。その後の世界がいかに劇的に変わったことか。
「自由で開放的な国際協調主義(リベラル・インターナショナル・オーダー)」が根底から挑戦を受けている。
 一二年、プーチンは、チェチェン戦争の勇将、ヴァレリー・ゲラシモフを参謀総長に抜擢した。ゲラシモフは「今世紀の戦争は、戦時と平時の違いがなくなる。戦争はもはや宣戦布告を伴わない。平時が戦場そのものだからだ。アラブの春は二十一世紀戦争の幕開けを告げるものなのだ」と宣告した。
 ゲラシモフ・ドクトリンの登場で、“ハイブリッド戦争”や“リトル・グリーン・メン”や“グレー・ゾーン”が平時の戦争を彩った。
 一方、米国では「世界の警察官にはならない」とのオバマ・ドクトリンが誕生した。米国の死活的国益を守る以外は世界にコミットメントすることは控える。シリアへの非介・・・