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WORLD

EU離脱をやめそうな英国

謝罪と「騒動の代償」をどう払うか

2017年8月号

「なぜこんなことになったのか」(二十代男性)
「欧州連合(EU)離脱に賛成票を投じた自分が情けない」(五十代女性)
 ロンドンの街頭で市民に聞くと、怨嗟と怒り、後悔ばかりが返ってくる。ブレグジット(Brexit)の国民投票から一年余りで、英国はEUのつまはじき者になり、国際的地位は劇的に低下した。そしてその上、国民の過半数が「EU離脱をやめたい」と心底望んでいる。
 舌を嚙みそうな「ブレグジッテキジット(Brexitexit=EU離脱からの離脱)」を主導する一人は、悪名高いEU条約第五十条(EU離脱の手続き)を起草した英国の元外交官、ジョン・カー卿だ。
 彼は七月中旬、ジョージ・ロバートソン元北大西洋条約機構(NATO)事務総長ら郷里のスコットランドの顕官、知識人と共同で公開書簡を発表し、「ブレグジットは破滅的結果をもたらす」として離脱交渉の中止を求めた。
 同卿によると、離脱申請をした後でも、それを中止、撤回することはEU法上、全く問題がない。公開書簡は「ブレグジットについて再考し、離脱プロセスを中断することを全英で議論し、英国民の心・・・