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政治

もはや存在意義なし「農林族議員」

日欧EPA「大枠」合意の舞台裏

2017年8月号

 欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉のため七月五日午後、ブリュッセル国際空港に降り立った西川公也元農相たち自民党の農林族議員団は、「大枠合意」の一報を受けて愕然とした。彼らが機中にいる間に既に交渉は決着し、岸田文雄外相とマルムストローム欧州委員(通商担当)の共同記者会見も終わっていた。二人はそれぞれ、白と赤(日本)、青と黄色(EU)のデザインの両目が入ったダルマを手に持ち「大枠合意に達した」と笑顔で写真に収まっていた。自民党農林族議員の最高ポストである農林・食料戦略調査会の会長を務める西川元農相以下、農林族議員団にはまったく出番がなかったのだ。
 このような光景は、世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉(ドーハラウンド)はもちろん、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉でもなかった。自民党は貿易交渉の節目では必ず農林族議員団を送り込み、政府の交渉官を監視し、重要分野では現地で意見交換して実質的なプレーヤーとして交渉に参画した。
 安倍政権はこうした交渉スタイルを嫌い、TPPでは情報を内閣府に一元化し、農林族議員を遮断したが、それでも彼らは現地入りして交渉経緯・・・

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