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連載

皇室の風108

婚約取材の煉獄Ⅱ
岩井克己

2017年8月号


七月八日に予定されていた眞子内親王の婚約内定の発表は、七月五日に九州北部を襲った記録的豪雨災害のため延期された。死者が三十人を超え、行方不明者の捜索も続く状態に配慮した。
 皇室が内親王の婚約内定発表を延期したのは、平成十六年、新潟県中越地震に配慮し紀宮清子内親王が延期したのに続く事態だ。
 紀宮の相手の「黒田慶樹」の名を筆者がつかんだのは同年十月二十一日。新潟県の小千谷市、十日町市、長岡市、山古志村などを震度七から六の烈震が襲ったのは二日後の同二十三日だった。
 死者六十八人をはじめ死傷者は約四千九百人。家屋全半壊一万七千棟。最大十万人に達した避難者は各地の学校体育館など避難所からあふれ、車内泊を余儀なくされてエコノミークラス症候群などで命を落とす人も相次いだ。
 天皇、皇后は十一月六日、自衛隊機とヘリを乗り継いで被災地を訪れ、二千人以上が避難した小千谷市総合体育館、全村避難となった山古志村の住民が避難した長岡大手高校などで「大変でしたね」「美しい村を取り戻してください」などと励まして回った。
 十一月十日前後に予定されて・・・