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経済

《地方金融の研究》岡崎信用金庫(愛知県)

「普通銀行」転換への夢と現実

2017年8月号

 名古屋から名鉄名古屋本線の特急で約三十分。東岡崎駅で下車して北に上り、「二十七曲がり」と呼ばれる旧東海道沿いの、右に左に何度も折れ曲がる道を少し西に行ったところにその建物はある。
 岡崎信用金庫資料館―。赤レンガと地元産の御影石を組み合わせ、本格的なルネッサンス様式を取り入れた外観が特徴で、一九一七(大正六)年竣工というから今年でちょうど生誕百周年というわけか。二〇〇八年には国の有形文化財にも指定されている。
 もともとは戦前における岡崎経済の支柱とされた「岡崎銀行」の本店として建てられたものだが、同行が一九四五年東海銀行(現三菱東京UFJ銀行)に吸収合併された後は、終戦直前の「岡崎大空襲」による被災とも相まって、廃墟同然になっていた。これを岡崎商工会議所が買い取って修復し、自身の本部として再稼働させたのは五〇年のこと。ただそれも組織の拡大とともに手狭となり、「解体」が取り沙汰されはじめた矢先、土地ごと購入を名乗り出たのが岡崎信金だった。
「(建物は)岡崎の金融・経済の歴史そのもので取り壊すのは忍びない」。当時の理事長で、商工会議所会頭も兼ねていた服部敏・・・