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政治

たそがれ迫る 「安倍政権」

解散権すら失った「一強」の末路

2017年9月号

 関東地方にようやく夏らしい暑さが戻ってきた八月二十二日の午前、官房長官菅義偉は茨城県常陸太田に眠る元官房長官梶山静六の墓前で手を合わせた。ちょうど茨城県知事選が終盤戦に差し掛かったタイミングだったが、菅はあえて選挙応援をせずに、八月三日の内閣改造で地方創生担当相として初入閣した梶山の長男弘志ら家族と食事を共にして東京に戻った。菅は、第二次安倍内閣で官房長官に就任した直後にも、梶山の墓前に足を運んでいる。
「梶山氏は私が初当選した時の官房長官。日本の危機的状況を政治の力で変えることができた政治家だ。(私も)政治の力で危機を突破し、国民の期待に応えたい」
 それから約四年半。菅をして再び梶山の墓前に向かわせた理由は何か。やはり梶山弘志の入閣以外に思い付くものがない。
 菅は梶山と兄弟分の関係にあった元通商産業相小此木彦三郎の秘書から政界に足を踏み入れた。小此木が急死した後は梶山を師と仰いできた。菅にとって弘志の入閣は長く心に温めてきた今は亡き梶山への「恩返し」の証しと言えた。しかも弘志のポストは竹下内閣の自治相として梶山が手掛けた「ふるさと創生」の流れを汲む・・・