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経済

《企業研究》日本たばこ産業(JT)

国内外で窮地に立つ「健康破壊企業」

2017年9月号

 米RJRナビスコの米国外事業や英ギャラハーなどの大型買収を繰り返し、たばこ業界世界三位の座にまで上りつめた日本たばこ産業(JT)。そのJTがいま岐路に立たされている。十八番のM&A戦略に手詰まり感が強まっているうえ、昨年春に本格登場した新型たばこ「加熱式たばこ」に金城湯池の国内市場を急速に食い荒らされ、苦戦を強いられているのだ。
「焦燥感の裏返しではないですかね」。市場関係者の一人は漏らす。
 今年八月に入って一千億円超のM&Aディールを立て続けにまとめ上げたJT。四日にはインドネシアのたばこメーカー、カリヤディビア・マハディカ(KDM)と同社製品を販売する流通会社のスーリヤ・ムスティカ・ヌサンタラを計一千百億円(十億ドル)で買収すると発表。二十二日にはフィリピンの大手メーカー、マイティー・コーポレーションの資産総額一千百七十八億円(五百二十六億ペソ)での買い取りも決めた。
 だが、KDMは葉タバコに香辛料などを混ぜたインドネシア特有の「クレテックたばこ」で強みを持つとはいえ、二〇一六年の売上高はおよそ五百六十億円と、JTの売上高のわずか四十分の一。同国・・・