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WORLD

米中「覇権の逆転」が始まる

「内向き」トランプが破壊する世界秩序

2017年9月号特別リポート

 第二次世界大戦が終焉した七十二年前に米国の国際政治における指導性に疑問を呈した向きはいるだろうか。
 独裁者スターリンが率いる全体主義陣営が国内では独裁の恐怖政治で反対派を締め上げ、第三インターナショナルを通じて世界の共産革命を目論んだ。これに対して戦勝国の指導的立場にあった米国はイデオロギー的に自由主義、民主主義で対抗し、さらに普遍的価値観として法治主義、人権主義を加えた。米国の大統領はトルーマン、アイゼンハワー、ケネディ、ジョンソン、ニクソン、カーター、ブッシュなどオバマ大統領に至るまで民主主義の大旗を掲げてソ連の唱導する共産主義に対するイデオロギー競争を展開してきたのである。
 冷戦、すなわち東西両陣営の対立は一九九一年に西側陣営の勝利をもって終わりを告げ、終了したかに見えたが、この後に「平和的台頭」を口にしながら大国化の道を驀進してきたのは中国だ。が、やがて中国は平和的台頭をいっさい口にしなくなり、数年前からアジア大陸と欧州大陸にまたがる広大な領域、水域に巨額な投資を実施し、シルクロード時代を連想させる「一帯一路」構想を習近平国家主席自らぶち上げ、実施に着・・・