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社会・文化

「バリウム検査利権」の深い病巣

日本だけ国民「大量被ばく」が続く

2017年9月号

 胃を膨らませる発泡剤とバリウム(造影剤)を飲まされて、X線装置の上に寝転ぶ検査は国民の多くが経験しているだろう。身体を左右に回転し胃壁にバリウムをべっとりと付着させ、複数の角度から撮影していく、あの苦しい光景だ。これは健康増進法に基づき、市町村の義務として課されているがん検診の一つで、X線透視検査の危険性が指摘されて久しい。知らぬまま大量被曝にさらされる異常な検査で、健康増進どころか、身体を静かにゆっくりと蝕む不可視の「凶器」だ。この背後には「バリウム検査利権」の甘い汁にハイエナのように群がる医師や公務員の悪の生態系がはびこる。検診にかこつけて、国民にバリウムを注入してX線を浴びせる国家的な悪逆行為を、日本はいつまで続けるのか。

都道府県と結託の独占事業

 バリウム検査による胃がん検診で四割ほどの罹患を見落としていた―。青森県が七月に発表したデータは波紋を呼んだ。見落とし率が一〇~二〇%程度の内視鏡検査とは比べるべくもない。被曝も深刻だ。集団検診でのバリウム検査の被曝量の平均は二・九ミリシーベルトで、胸部X・・・