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パリが変貌「IT起業家の都」に

国策「シリコンバレー化構想」が奏功

2017年10月号

 パリがシリコンバレーになる―。想像するだに奇妙な組み合わせが、フランスのエマニュエル・マクロン大統領の下で、急速に動いている。「古いヨーロッパ」随一の花の都が、欧州屈指のハイテク首都に変貌しつつある。

仕掛け人は仏版「孫正義」

 今夏に開館した新興(スタートアップ)企業の起業拠点「スタシオンF」は、入った瞬間にその広さに圧倒される。鉄道駅を模した点で、オルセー美術館を連想させるが、あまりのスペースに先がかすんで見える。
 仕掛け人で通信会社「イリアッド」創業者のグザビエ・ニール氏は、開館時に訪れたマクロン大統領夫妻に、「Fにはフランス、女性(Femme)、創業者とたくさんの意味があります」と説明した。
 この拠点には三千以上のデスクがあって、四千人以上を収容可能だ。通信環境は抜群で、月額約二百ユーロの賃貸料を払えば入居できる。約六十のデスクごとに「村」と呼ばれる執務スペースがあり、類似の事業者や異種事業者が提携や共同作業を手軽に話し合える。九月までに二千件以上の応募があった。
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