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WORLD

イスラエルが希求する「次の中東戦争」

トランプも煽る「イランとの対決」

2017年10月号

 強い閃光が走った後、建物はスローモーションのように爆発し、崩壊した。ほぼ同時に、この建物の外にあったキャンプも爆発した。正確な狙いと高度な破壊力。九月七日未明に、シリア・ハマー県のマスヤーフという町で空爆を敢行したのは、イスラエル空軍以外にはなかった。
 この種の攻撃では常にそうであるように、イスラエル政府・軍とも公式なコメントはしなかった。
 代わって、軍の「関係者」たちが雄弁にエルサレム駐在の報道陣に語った。その一人で、元軍高官のヤーコブ・アミドロール氏は、標的が「シリア科学研究センター」であり、実際には化学兵器の製造にあたっていたこと、同時に爆撃されたキャンプは、レバノン拠点のイスラム教シーア派原理主義組織「ヒズボラ」が使っていたことを明らかにした。空爆の目的は、アサド政権が開発する化学兵器が、イスラエルの仇敵であるヒズボラの手に渡るのを防ぐことだった。
 同氏は「シリアの政府施設攻撃はこれが初めてだ」とさらりと語った。マスヤーフはイスラエルが実効支配するゴラン高原から約五百キロ北方にある。攻撃機はレバノン領空を侵犯した上で、午前二時過ぎに目標地点・・・