三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

新日鐵住金と自動車業界「蜜月の終焉」

トヨタの中国製鋼材「採用」で激震

2017年10月号

 鉄鋼メーカーにとって最も重要な顧客は疑いなく自動車メーカーである。車体の外板、骨格、エンジンなど重要なものはすべて鉄だからだ。戦後、日本の鉄鋼産業と自動車業界は切磋琢磨し技術を高め、世界に飛躍した。その筆頭のトヨタ自動車がタイで鉄鋼の筆頭、新日鐵住金の鋼材に代え、中国製の調達を始めた。まだごく一部だが「中国製鋼材の品質向上は評価できる」と関係者は言い、今後の拡大に含みをもたす。トヨタの動きは日本の自動車業界全体に波及するのは間違いない。

中国の鋼材の水準が格段に向上

 東南アジア最大の自動車産業集積を持ち、二〇一三年には二百四十六万台を生産し、世界第九位の自動車生産大国になったタイ。トヨタはタイ市場で三五%前後のシェアを握り、輸出も含めると五十万台を生産する。カローラ、カムリ、ヴィオスなどの乗用車に加え、途上国で多目的車として人気の高いハイエースや、ピックアップトラックのハイラックスなどを生産している。日本以外のアジアでは中国に次ぐ拠点だ。
 国内に高炉のないタイでは、自動車各社はこれまで新日鐵住・・・