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米国「貿易赤字」が急膨張

トランプ通商政策の「破綻」鮮明に

2017年11月号

 米国のドナルド・トランプ大統領による米国優先の通商政策が、土台から崩れ始めた。
 輸入制限の導入を恐れた米国内の製造業者が、早めの輸入に殺到しているためで、鉄鋼製品などの輸入が急上昇し、今年の貿易赤字は昨年を大幅に上回るペースだ。「トランプ版重商主義(マーカンティリズム)」は、米産業を保護するどころか、米経済に大打撃となる危険も指摘されている。

鉄鋼、アルミ業界が悲鳴

 トランプ政策に最初に悲鳴を上げたのは、トランプ大統領が「再生」を約束した鉄鋼業界だ。今年八月、「USスティール」など鉄鋼業界二十五社の幹部が、ホワイトハウスに「ただちに輸入制限の行動を起こしてほしい」と訴えたのだ。今年一〜七月までの鉄鋼輸入量が前年同期比で二二%も跳ね上がったのだから、「何とかして」と泣きつくのは当然である。
 しかも、輸入急増の理由は、米政府の措置にあった。商務省が今年四月、「通商拡大法第二百三十二条」に基づいて、「鉄鋼製品の輸入が米国の安全保障に及ぼす影響」について調査を開始したのだ。同月にはアルミニ・・・