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習近平「個人崇拝」の危うい統治

「社会主義回帰」で揺らぐ二期目

2017年11月号

 中国の「習近平新時代」が幕開けした。
 十月二十四日、北京の人民大会堂で開かれていた共産党第十九回党大会の最終日、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」を「党の指導思想」に加筆する党規約改正案が採択され、習近平国家主席に最高指導者のスーパー権力が付与された。この瞬間、中国は「改革開放」路線の鄧小平時代に終わりを告げ、習近平個人崇拝の「現代化社会主義強国」へ時代錯誤の逆行を始めた。これが「中華民族の偉大な復興の道」なのか。自滅への道ではないのか。
 党規約に「習近平」の名前が書かれたことは、形式的な権威ではない。党規約に思想の「指導者」として挙げられた人物はマルクス、レーニン(主義)、毛沢東(思想)、鄧小平(理論)だ。それに習近平(思想)が並んだ。このうちで生存中に名前を書かれたのは毛、習両氏だけだ。これまで習主席の権力は党総書記というポストによるものだったが、今後は「習近平」という個人の人格が権力の根拠となる。
 総書記を引退しても命のある限り終身、最高指導者の地位を確保した。権力の根源が法的地位ではなく人間だというのは前近代的な「人治」だ。皇帝と・・・