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政治

「安倍三期目」に晴れぬ視界

大勝でも望まれぬ長期政権「継続」

2017年11月号

「(自公で)三分の二を超えたので引き揚げましょう」―
 衆議院総選挙での自民党圧勝を見届けた首相安倍晋三はこう言い残して自民党本部を後にした。十月二十二日の投開票日とはいえ日付が変わり、時計の針は午前一時半を回っていた。安倍が党本部入りしたのは二十二日の午後八時前だから、かれこれ五時間半も党本部に滞在した計算だ。安倍は深夜のラジオ各局の報道番組への出演を終えると、開票センターの置かれた党本部四階の平河クラブからエレベーターホールを挟んで反対側にある幹事長室に陣取った。そこには幹事長二階俊博、元官房長官河村建夫、国会対策委員長森山裕ら党幹部に加え、官房長官の菅義偉ら政権中枢を担う面々が顔を揃えていた。どの顔にも笑顔がなく、むしろほっとした安堵感が支配していた。口火を切った安倍の発言にその思いが溢れた。
「格好よく言えば乾坤一擲。イチかバチかの大勝負でこんなに勝てるとは思わなかった」
 確かに安倍が仕掛けた「奇襲解散」は失敗に終わるかに見えた。東京都知事小池百合子による「希望の党」の結成だ。安倍が解散を表明する九月二十五日の記者会見直前に、小池が鼻の差で新党結・・・