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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》旧日本軍「遺棄化学兵器」

中国に払い続ける巨額「戦後補償費」

2017年11月号

 戦後七十年以上がたった今も、最大の戦後処理と言われる事業が莫大な国費を投入して、粛々と行われていることを知っているだろうか? 旧日本軍が中国本土に遺棄したとされる化学兵器の処理がそれである。
 日本政府による処理事業が中国本土で始まったのは十七年前。日本ではほとんど報道されることのない“最大の戦後処理”なのだが、中国では違う。中国政府は事あるごとにこの問題を持ち出しては報道を繰り返している。
「第二次世界大戦中に日本軍が化学兵器を製造、使用し、中国などの被害国の戦闘員や無実の民間人に多数の死傷者をもたらした」
 今年八月、中国外交部の定例記者会見で報道官の華春瑩はこうコメントし、最後に次のように締め括った。
「日本が軍国主義の侵略の歴史を深く反省し、中国に遺棄された化学兵器を一日も早く廃棄し、清潔な土地を中国人に返還するように促す」
 二〇〇〇年に政府予算二十八億円で始まった遺棄化学兵器処理事業の予算は膨れ上がり、今年度は三百六十一億七千万円が計上された。過去十八年間で、およそ三千七百億円余りの国費が投入されて・・・