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アジアの盟主「米中交代」の危機

習近平に「完敗」したトランプ訪中

2017年12月号特別リポート

 しばらく鳴りを潜めていた北朝鮮がミサイル実験を再開した。十一月二十九日未明、大陸間弾道弾(ICBM)級のミサイルを発射し、青森県沖の日本海に着弾する事態となった。トランプ大統領が十一月二十日の閣議の冒頭で、北朝鮮をテロ支援国家に再指定すると発表して俄かに緊張感が漂っていた。突発事件は当事者でも見当のつかない場合が少なくない。ましてや、いったん行動を開始すれば北朝鮮という国の運命さえ木っ端微塵になる実力の保持者米国と中国が何を計算し、どのような行動を今後起こそうとしているのかを正確に分析するのは極めて困難だ。
 トランプ大統領は十一月九日に北京で習近平国家主席と首脳会談を行った。日本、韓国、ベトナム、フィリピンを含めたアジア五カ国訪問の目玉は訪中だった。最重要課題は、北朝鮮問題解決の一層の努力を中国に約束させるのと、米中間の貿易均衡の実現だ。欧米メディアがトランプ外交の失敗を嗤っている中で、大統領自身は「大成功」とPRしているのは、悲劇と言うよりは滑稽であろう。
 国際政治学で国力と言えば、かつては軍事力、人口、経済力、国土の面積、それも首都は要害の地である必要があ・・・