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租税回避地「英王室属領」の落日

「金融の楽園」にも時代の波

2017年12月号

 英国のエリザベス女王が、自身の個人資産のうち約一千万ポンド(約十五億円)を、英国海外領である租税回避地(タックスヘイブン)、ケイマン諸島やバミューダ諸島のファンドなどに投資していたことが、新資料「パラダイス文書」で明らかになった。
 だが、英国を含めどこのメディアも報じないのは、同文書や昨年の「パナマ文書」で注目を集めた、英国領タックスヘイブンのほとんどが、「王室属領」か、英国君主(女王)の「直轄植民地」だったことだ。歴代の英国政府はこれを隠れ蓑に、税法など国内法の厳密な適用を行わず、タックスヘイブンとして発展するのを、事実上放置してきた。エリザベス女王個人の意図と離れて、英王室は世界最大級のタックスヘイブンの元祖となったのである。
 今回の文書暴露について、英王室の反応は困惑そのものである。
 英王室が世襲してきた資産は、「クラウン・エステート(君主の不動産)」という資産管理会社に託され、王室は毎年、王室維持費として「ソブリン・グラント(君主への付与)」を受け取る。昨年度は約四千二百万ポンドの付与があった。このほか、「ランカスター公領」「コーンウォール・・・