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連載

美の艶話24

谷崎潤一郎の「足フェチ」
佐伯 順子

2017年12月号

 男に足で踏まれてうれしい女性がいるだろうか―痛いし、傷はできるし、ほとんどの場合は立派な暴力である。女性がもし暴力被害者であると主張すれば、相手に踏んでくれと頼まれたから、と男性が言い訳したとしても、通用する可能性は限りなく低い。
 ところが、逆はそうでもない。谷崎潤一郎は、女性の尻に敷かれたいどころか、女の足に踏まれてうれしい、という男性の告白を、複数の作品に赤裸々に記している。
 もちろん、文学作品の作者と登場人物を単純に同一視してはいけないが、大正期から昭和に至るまで、谷崎の作品にはしつこいほど、女性の足へのこだわりが描かれ続ける。
 そのものずばり「足」がタイトルとなっている『富美子の足』(一九一九年)は、六十歳をすぎた隠居と十九歳の美術学生・宇之吉が、隠居の妾である富美子という女性の足に、ともに魅了される姿を描く。隠居は富美子の姿を油絵に描いてほしいと宇之吉に依頼するが、肖像画なら顔や上半身が中心かと思いきや、宇之吉と隠居が二人ともに注目したのは、富美子の足であった。
「こんな美しい踵となって、お富美さんの足の裏に附く事が出来れば&h・・・