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連載

をんな千一夜 第9夜

管野須賀子 憂国の「書く女」
石井 妙子

2017年12月号

 管野須賀子は明治時代の新聞記者であり、婦人運動家。社会主義者の恋人、幸徳秋水とともに大逆事件で捕らえられ、女性として唯一、絞首刑に処せられた人物である。明治天皇の爆殺を企てた首謀者という罪を着せられたわけだが、これは今日、官憲によって捏造された冤罪との評価が定まっている。
 その一方でまた、須賀子には、「男を渡り歩いてきた女」「妖婦」「幸徳秋水をたぶらかした魔女」といったレッテル貼りもなされ、こちらは未だに根強く浸透している。
 しかし、彼女は本当にそのような女性だったのか。
 噂の出元は、はっきりとしている。須賀子バッシングをしたのは主に幸徳秋水を取り巻いていた、弟子にあたる男たちだった。
 自分たちの尊敬する師匠の秋水が、新入りの須賀子に夢中になった。同棲し、須賀子を編集名義人として、雑誌『自由思想』をふたりで出版しもする。弟子たちからすれば、面白くなかったことだろう。
 その上、須賀子は、もともとは秋水の弟子にあたる荒畑寒村の恋人だった。秋水が横取りしたとも言えたし、須賀子が無名の寒村を捨てて、トップの秋水に乗り換えたとも周囲に・・・