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連載

西風 440

安藤忠雄と大阪人の「相思相愛」

2018年1月号

 関西、中でも大阪はことのほか地元愛が強い。それ自体はいいことだろうが、時にそれが大阪人を縛り付けることも多い。全国的にはすっかりブームが去った大阪維新の会が根強い支持を集め、他の地域では眉をひそめられかねない言動を続ける松井一郎大阪府知事が人気者となる。これに東京への対抗心という厄介な代物が加わると、地元愛はひいきの引き倒しにも変化する。
 二〇一七年秋以降、建築家の安藤忠雄氏がメディアに登場することが増えた。きっかけは、国立新美術館(東京・六本木)のオープン十周年を記念して「安藤忠雄展~挑戦~」が九月から十二月までの日程で開催されたことだ。国立新美術館の意図は不明だが、安藤氏は、少なくとも東京では「過去の人」だったはずだ。原因は言わずもがな、一五年に噴出した「新国立競技場問題」だ。建設費が膨れ上がった最大の原因であるデザイン選定に関与した安藤氏は、問題発覚後に「プロセスを承知していない」などと見苦しい言い訳に終始した揚げ句に、説明責任を果たさずに雲隠れした。
 しかし大阪では安藤氏は根強い人気を誇る。ぼそぼそと話す大阪弁で直言をするという評価が定着しているのだ。・・・