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経済

野村證券「社長交代」の憂鬱

「ポスト永井」が描けぬ人材難

2018年1月号

 野村證券を主軸に置く野村ホールディングスにトップ人事の季節が巡ってきた。現在の永井浩二・グループCEOの体制は二〇一八年八月で丸六年を迎えるからだ。すでに同体制には賞味期限切れの色合いが強まっており、経営陣の刷新は秒読み段階に入っている。
 永井氏がトップの座に就いたのは二〇一二年八月だった。その直前、野村は増資に絡むインサイダー事件が発覚し、金融庁・証券取引等監視委員会は立ち入り検査の結果、厳しい処分を下した。もちろん、事件の悪質さに応じたものだが、ここには、もうひとつ、微妙に絡む問題があった。野村によるリーマン・ブラザーズの一部買収である。結果的に見て、同買収はその後に発生した巨額のリストラ費用などを勘案すると失敗策に近かったが、当時の渡部賢一・グループCEOなど経営陣は自己正当化に走った。そこに、野村という企業特有の体質と言える傲慢さが加わり、わが国のみならず、欧米当局をも軽視しがちになっていた。
 そんな野村に対する金融庁などの怒りが頂点に達したときに発覚したのがインサイダー事件だった。したがって、当局による野村への立ち入り検査とその後の処分は厳しく、一時・・・