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連載

Book Reviewing Globe 404

運が良かった占領下の日本

2018年1月号

 9・11テロ事件の後、ブッシュ米政権がアフガニスタンとイラクで対テロ戦争を行い、それぞれを占領したとき、米国のシンクタンク、ランド研究所は、戦後の日本とドイツの占領を参考にせよ、と説いた。「民主主義を移転させることはできるし、社会をある環境の下では変化させ、それも持続可能な形で変化させることができることを示した」ケースだったというのである。
 しかし、「日本モデル」はある一定の歴史的条件の下で成功したケースであり、他に応用可能と見なすべきではない。
 第一、日本は同質社会である。地域、宗教、民族の対立でバラバラになる危険性はほぼない。戦争でインフラは破壊されたが、官僚、産業、金融の機構的基盤は残った。
 当時の米国務省における対日戦後・占領計画は、一九四二年秋に始まり、四五年の秋までの間に二百三十四回の会合を開いた。会合を主宰したのは、国務省きっての知日派、ユージン・ドーマンであった。
 対独占領計画と違って、対日占領計画には懲罰的占領政策を特色とする「モーゲンソー・プラン」を主張する財務省が加わらなかった。ジョセフ・グルー国務次官が、財務省の・・・