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社会・文化

中国に傾倒する「岩波書店」

広辞苑「台湾記述問題」の背景

2018年2月号

 創業百年を超える老舗出版社、岩波書店の看板商品である国民辞典「広辞苑」が十年ぶりに改訂され、一月十二日から全国の書店で発売された。直後から、今回の第七版での「しまなみ海道」や「LGBT」の項目に誤りが見つかり、岩波書店側が謝罪し、「重版で訂正したい」とコメントを出した。
 この程度ならご愛嬌だが、台湾を巡る記述では、中国、台湾、日本を巻き込んだ国際的な論争になっている。岩波の中国への傾倒が窺えるが、実は、背に腹は代えられない事情を抱えているのだ。

中国市場に活路を見出す

 台湾の表記問題について、簡単に経緯をなぞると、一つ前の版である広辞苑第六版の「日中共同声明」の項で、「日本は台湾が中華人民共和国に帰属することを実質的に認めた」(要約)と記述している。これについて、台湾の大使館に当たる台北駐日経済文化代表処が昨年十二月、岩波に対して訂正を求める書簡を送った。また、中華人民共和国の項目内で、台湾が「中国の二十六番目の省」であるかのような地図を掲載していることも、台湾側から抗議されている。
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